2023年2月11日

半導体の輸出規制は的を絞り予見性高く

政府は先端半導体の輸出や技術供与について中国を念頭に置いた新規制導入の検討を始めた。米国の要請を受けた動きで、ミサイルの精密誘導など国防に直結する半導体の戦略的価値を考慮すれば、一定の規制はやむを得まい。

他方で規制の範囲が広すぎたり、曖昧だったりすることで、国内半導体産業が必要以上の打撃を被る事態は避けないといけない。必要最小限の範囲に的を絞った、予見可能性の高い規制をどうつくるか、政府の能力が問われる。

対中国の半導体政策で最も強硬なのが米国だ。2022年10月には、先端半導体やそれをつくる製造装置を中国に輸出・技術供与することを厳しく制限した。さらに米国人が中国の先端品の開発や生産に関与することを事実上禁じ、個人の行動まで縛るに至った。

日の丸半導体は衰えたが、関連する製造装置や素材では日本企業の技術力はなお健在だ。ワシントンでは「規制の実効性を確保するために、日本にも対中包囲網への参画を促す必要がある」という声が高まり、露光技術に強いオランダとともに日本も米国に同調することになったようだ。

中国の軍事的な脅威が高まるなかで、日本が同盟国の米国の要請に応じるのは自然な成り行きだ。半導体をめぐる総合的な技術力で今も世界有数の米国との距離を縮めることは、日本の産業界にとっても一定のメリットがある。