2023年1月18日

米規制で打撃の中国、パワー半導体に「驚きの投資増」

中国に対する米国の半導体輸出規制が厳しさを増している。ロジックやメモリーといった主要技術の成長にストップがかかりそうだ。足元ではパワー半導体など、先端技術を必要としない領域への投資が拡大する。

NANDフラッシュメモリーで中国最大手の長江存儲科技(YMTC)の武漢工場。20年から第2期の製造工場の設備投資が進んでおり、完成時にはシリコンウエハー20万枚相当の月産を計画する。早ければ22年中に量産が始まるとみられていた。

半導体の受託製造(ファウンドリー)では、中芯国際集成電路製造(SMIC)の存在も際立つ。電子機器の「頭脳」に当たるロジック半導体では、回路線幅で14ナノメートル(ナノは10億分の1、nm)の量産に対応する。22年7~9月は世界シェアで5位に付けた。

今回の一連の規制の中で、米国は新たにNANDフラッシュメモリーへの規制で記憶素子を128層以上積み重ねる積層技術を対象とした。ロジック半導体では許容する回路プロセスがこれまでの10nmから14nmまたは16nm以下と、より古い世代の製造技術に対象を拡大。いずれもYMTCやSMICの製造に直接影響を与える内容だ。

「信じられないレベルで投資が増えている」。半導体の業界団体SEMIジャパン(東京・千代田)の青木慎一インダストリースペシャリストがこう話すのは、電力や電圧を制御するパワー半導体だ。同団体が22年10月末にまとめた中国の半導体工場の新規投資計画では、8割以上の確率で投資が進むと判断した8件の半数がパワー半導体への投資だった。水面下で検討が進む25超の案件でも、この傾向は変わらないという。

中国企業がパワー半導体投資を強化する理由は大きく2つ。電気自動車(EV)など脱炭素実現に不可欠なコア部品であること、そして最先端の微細加工技術が不要なことだ。「パワー半導体は90nmの技術が主流。製造のハードルが低いだけでなく、今回の米国による輸出規制も受けない」と青木氏は指摘する。